※このページは、令和7年3月に行った所長インタビューを記事にしたものです。
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【所長インタビュー】
- 知財高裁所長の本多知成裁判官に知財高裁の特色について聞きました。
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【質問1 「知的財産権」ってなんだかよくわかりません】
- 例えば、知的財産権の1つに著作権があります。著作権は、本、美術品、音楽、写真、映画などの著作物を創作した人を保護する権利です。
著作権については、以前から著作物を違法にコピーされたなどとして、裁判所に紛争が持ち込まれていましたが、企業活動の中での紛争という面が強かったように感じます。
しかし、最近ではスマートフォンの普及、SNSの発達により、誰でも身近に情報を発信することができるようになっています。それに加えてデジタル化も進み、著作物もデジタル化された結果、あまり意識することなく、他人の著作物をコピーして、SNSなどで情報発信してしまうことが増えているように思います。
著作権をもつ人はそういった場合、自分の著作物を勝手に使用しないように相手に求めると思います。しかし、SNSの多くが匿名であるため、まずはSNSの運営会社や発信者の利用しているインターネットプロバイダに対し、発信者の情報(名前や連絡先など)を開示するように求めることになります。
そういった紛争が増えてきていますので、知的財産の紛争といっても企業活動に関わるものだけでなく、身近のものがあることも知っていただきたいと考えています。
その他、知的財産権はみなさんの身の回りにもたくさんあります。
特許でいえば、例えば、みなさんがいつも使っているスマートフォンにも数多くの特許が使われています。また、スマートフォンを使うには、電波が必要だと思うのですが、そこにも特許が使われていたりします。
知的財産権には、特許のほかにも、お店の名前やブランド名やロゴなどを保護する「商標権」や商品などのデザインを保護する「意匠権」があります。
- 例えば、知的財産権の1つに著作権があります。著作権は、本、美術品、音楽、写真、映画などの著作物を創作した人を保護する権利です。
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【質問2 知財高裁の役割とはなんでしょうか】
- まず、裁判所にもちこまれた知的財産の紛争を解決することが重要な役割です。「紛争を解決する」というのは他の裁判所の役割と同じです。
民事裁判で紛争を解決する手段は、話し合いで解決をする「和解」という方法があるのですが、「和解」ができない場合には、法律的な判断を行う「判決」を行うことになります。
「判決」はその裁判の解決のために示されるものですが、「判決」の内容が他の企業の似たような紛争の解決指針や将来の活動指針となることもあるため、多くの関係者が知財高裁の「判決」に関心を持っています。
そのため、知財高裁では、言渡しが終わった「判決」を知財高裁のウェブサイトで公開しています。企業の活動指針を示しているといえます。
- まず、裁判所にもちこまれた知的財産の紛争を解決することが重要な役割です。「紛争を解決する」というのは他の裁判所の役割と同じです。
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【質問3 所長が感じる知財高裁の特色はとのようなものでしょうか】
- 東京の「裁判所」というと、官公庁街として知られる霞が関にあるイメージがあるかもしれませんが、「知的財産高等裁判所」は、山手線の駅でいうと恵比寿に隣接する中目黒にある「ビジネス・コート」と呼ばれる庁舎にあります。「知的財産高等裁判所」は、「知財高裁(チザイコウサイ)」と省略して呼ばれることが多いです。
「ビジネス・コート」は、知財高裁のほか、東京地方裁判所の知財部やビジネスに関係する他の部署も入っており、ビジネス関連の訴訟を集中的に取り扱っています。
また知財高裁は、「知的財産」に関する裁判のみを取り扱っています。知的財産というのは、例えば、発明を保護する「特許」についての権利が一例です。
「特許」や「発明」と聞くと何を想像するでしょうか。おそらく「専門的な内容」や「先端技術」といったイメージを持たれるかと思いますが、そのイメージのとおり、「知的財産」は、専門的な内容や先端技術に関係する内容になることがあります。
そのため、裁判官の判断で、専門的な内容や技術的な内容に関する知識や経験を持っている専門家に、裁判に参加してもらうことがあります。その専門家が「裁判所調査官」や「専門委員」と呼ばれる人たちです。こういった人たちが裁判に参加するというのが1つの特色です。
- 東京の「裁判所」というと、官公庁街として知られる霞が関にあるイメージがあるかもしれませんが、「知的財産高等裁判所」は、山手線の駅でいうと恵比寿に隣接する中目黒にある「ビジネス・コート」と呼ばれる庁舎にあります。「知的財産高等裁判所」は、「知財高裁(チザイコウサイ)」と省略して呼ばれることが多いです。
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【質問4 「技術説明会」ってなんですか】
- 「技術説明会」は、裁判官や裁判所調査官が、当事者から発明や技術の内容などについて説明を受けるために行われる手続です。
知財高裁で行われている技術説明会を例にすると、法廷で、当事者や裁判官のほか、調査官、専門委員が参加して、最初に当事者がプレゼンテーションを行った後、裁判官、調査官、専門委員が、当事者に対し説明した内容について質問をしたり、専門委員が専門的な内容について説明したりします。
この手続を行うことによって、審理判断を行う裁判官が発明や技術の内容についてより詳しく理解できるようになります。
- 「技術説明会」は、裁判官や裁判所調査官が、当事者から発明や技術の内容などについて説明を受けるために行われる手続です。
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【質問5 「大合議制度」ってなんですか】
- 「大合議制度」は、5人の裁判官で審理・裁判を行う制度です。
まず、裁判を担当する裁判官同士が話し合うことを「合議」といいます。そして、知財高裁では、通常3人の裁判官で審理判断しますが、裁判所の判断が広く企業活動に影響を与える場合などについては、より慎重な審理判断を行うため、5人の裁判官で審理判断を行うことがあります。
- 「大合議制度」は、5人の裁判官で審理・裁判を行う制度です。
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【質問は以上です。ありがとうございました。】
- 知的財産権は、我々の生活に密接にかかわっているものです。知財高裁は、知的財産権の紛争につき、スピード感をもって適正に解決することにより、皆様が安心して知的財産権を利用できるように努めております。