ウェブ会議を利用した審決取消訴訟について

トップ > 手続を利用する方へ > ウェブ会議を利用した審決取消訴訟について

令和4年7月
令和5年3月改訂
令和6年3月改訂

  • ウェブ会議について
     現在、知財高裁では、Teamsというアプリケーションを利用して、インターネット回線を介して裁判所及び当事者が映像と音声の送受信により同時に通話をするとともに、文書ファイル等の送受信や編集がその場で可能な方法を用いて、争点及び証拠の整理の手続を行う審理(ウェブ会議)が行われています。裁判所は、事件の内容、代理人の有無等を考慮し、事件ごとにウェブ会議(書面による準備手続又は弁論準備手続)による手続を行うかどうかを判断します。
     また、令和6年3月1日から、ウェブ会議の方法による口頭弁論期日も実施することができるようになりました。裁判所が当事者の意見を聴いて相当と認めたときは、ウェブ会議での参加を希望する方は裁判所に現実に出頭せずに、ウェブ会議によって口頭弁論に参加することができます。
  • 第1 審決取消訴訟(特許・実用新案)の進行について
     
    ウェブ会議を利用した審決取消訴訟(特許・実用新案)の基本的な進行は、次のとおりです(審理方式A及びBの図を併せてご覧ください)。裁判所の判断により、これと異なる進行とすることもありますので、その場合には、裁判所の指示に従ってください。
  • 1.ウェブ会議による期日等の指定
     裁判所が相当と認める場合、第1回口頭弁論期日の前に、裁判所は、事件を書面による準備手続又は弁論準備手続に付した上、ウェブ会議による期日等を指定します。これに先立ち、裁判所は、当事者に対し、ウェブ会議の利用希望について照会をしますので、当事者は、希望の有無を回答してください。
     ウェブ会議を利用した手続が行われる場合、当事者は、裁判所からの指示に従い、必要な設定等を行ってください。
  • 2.ウェブ会議による期日等(第1回)に向けての当事者の準備
    (1) 原告
     ア 基本的書証及び証拠説明書の提出
     原告は、訴状提出後、裁判所の定める期限までに基本的書証(審決が引用又は例示した先行技術文献、審決が判断の中で言及した手続関係の書面、本件特許の明細書・特許請求の範囲・図面、特許訂正等がある場合における訂正審判・訂正請求書等、及び手続違反を争う場合における関係する手続書面をいいます。)及び証拠説明書を提出してください。提出期限については、下記イの準備書面の提出期限と同じ期限が定められることもあります。
    (※)基本的書証として掲げたのは、一般的に必要と考えられるものです。個別の事案において、審決取消訴訟における争点と関連せず証拠調べの必要性のない書証を提出する必要はありません。
    (※)基本的書証の類型については、「審理要領・書式」の「4.書証・電磁データの提出について」の中の「第4 主な事件類型における基本的書証」を参照してください。
    (※)提出しようとする書証が大量となるような場合には、裁判所に提出する前に担当部にご相談ください。書証の取調べの必要性等を踏まえて、その提出の範囲や時期等について協議を行います。
    (※)書証の提出方法についてご不明な点があれば、事前に担当部にお問い合わせをお願いします。
  •  イ 準備書面と基本的書証以外の証拠の提出
     原告は、訴状提出後、裁判所の定める期限までに、審決(又は決定)に対する具体的な認否と取消事由を記載した準備書面及び基本的書証以外の必要な証拠を提出してください。原告は、取消事由の主張をこの書面で全て尽くすとともに、証拠もこの時点までに全て提出することになります。
    (※)準備書面が大部になる場合は、準備書面の冒頭に主張の骨子を記載するとともに、電磁データとして参考提出するWordファイルについて目次機能や見出し機能を活用してください。
  • (2) 被告
     被告は、訴状送達後、訴状に記載された請求の趣旨に対する答弁及び請求の原因の記載に対する認否を記載した答弁書を提出してください。
  • 3.ウェブ会議による期日等(第2回)に向けての当事者の準備
    (1) 被告
     被告は、ウェブ会議による期日等(第1回)において裁判所が定めた期限までに、原告主張の取消事由に対する反論を記載した準備書面並びに必要な証拠及び証拠説明書を提出してください。被告は、取消事由に対する反論をこの書面で全て尽くすとともに、証拠もこの時点までに全て提出することになります。
    (※)準備書面が大部になる場合は、準備書面の冒頭に主張の骨子を記載するとともに、電磁データとして参考提出するWordファイルについて目次機能や見出し機能を活用してください。
  • (2) 原告
     原告は、被告による上記準備書面の提出を受けて、再反論すべき点及び主張として補足すべき点があれば、ウェブ会議による期日等(第1回)において裁判所が定めた期限までに、準備書面並びにこの再反論に関して新たに必要となった証拠及び証拠説明書を提出してください。
    (※)原告の再反論については、裁判所の判断により、ウェブ会議(第2回)までの提出を求めないこともあります(審理方式B参照)。
  • 4.ウェブ会議における期日等の審理
    (1) 審理の内容 
     主張内容を明確にして争点を整理するほか、書面提出期限の設定、専門委員関与の見通し、技術説明会の実施の有無や実施する場合の準備等の進行スケジュールの調整をします。
     原則として、第2回のウェブ会議による期日等までに当事者の主張立証並びに争点及び証拠の整理を実質的に終了することになりますが、裁判所が必要と認めるときは、第3回以降のウェブ会議による期日、技術説明会の期日等を指定し、主張立証を補充する機会を設けることもあります。
     裁判所は、主張立証並びに争点及び証拠の整理が実質的に終了した時点で、書面による準備手続又は弁論準備手続を終結し、第1回口頭弁論期日の予定日を告知します。
  • (2)審理の方法
      ウェブ会議による期日等においては、裁判所及び当事者が画面上で対面しながら口頭による議論をするほか、Teamsにあらかじめアップロードされたファイルを基に裁判所及び当事者が同じ画面を共有しながら議論を進めたり、被疑侵害品を画面で示しながら当事者が説明したり、あるいは、裁判所及び当事者がアップロードされているファイルを同時に編集してその場で合意事項を確認するなど、視覚を利用した迅速かつ効率的な争点及び証拠の整理手続が行われます。さらに、遠方に在住している専門委員がウェブ会議で技術説明会に参加することが可能であるため、期日等を円滑に調整等することができます。
     また、訴え提起後は、ウェブ会議による期日等以外にも、必要があればその都度、Teamsの機能を利用して求釈明をしたり、審理について当事者からの意向聴取をしたりする等、Teamsを利用して機動的に争点整理等を進めることもできます。
     このように、ウェブ会議を利用した手続では、それぞれの事案に応じた柔軟かつ最適化された審理方法をとることが可能です。
     Teamsの機能を活用した審理の例として、次のようなものが考えられます。
  • 【投稿機能】
  • (例1)ウェブ会議における協議結果や次回ウェブ会議に向けた当事者の準備事項を受命裁判官がまとめたメモを、ウェブ会議終了時に投稿して裁判所と両当事者との間で協議結果を共有する。
  • (例2)当事者が提出した準備書面の記載事項中の不明点について、受命裁判官が当該当事者への釈明事項を記載したメモをウェブ会議前に投稿し、当事者から事前に回答を受けた上でウェブ会議に臨む。
  • 【ファイル共有】
  • (例1)当事者から、mints(民事裁判書類電子提出システム)に書証を大量に提出したいとの事前連絡を受けたことから、裁判所は、当該書証の一部や証拠説明書をTeamsにアップロードしてもらい、裁判所と当事者との間で、チャットを通じて、争点との関連性を踏まえて書証として正式に提出する範囲、方法等について協議をして、争点に関連する書証のみを提出するようにする。
  • (例2)裁判所の主張整理案を記載した書面をウェブ会議前にアップロードして、当事者にウェブ会議前に検討してもらい、ウェブ会議ではその内容を踏まえて争点の確認等の協議を行う。
  • 【画面共有】
  • (例1) 証拠として動画が提出されたことから、画面共有機能を用いて、当該動画を再生しながら当事者の説明を受け、口頭では分かりにくい立証事項を確認する。
  • (例2)専門委員がウェブ参加する技術説明会において、当事者双方が、画面共有機能を用いて、互いに自己の主張や必要となる技術的事項について資料に基づいてプレゼンテーションを実施し、遠方に在住する専門委員が裁判所に出頭を要せずに審理に関与する。
  • (3) 審理方式の例
     審決取消訴訟(特許・実用新案)で行われている審理方式の例は、次のようなものです。
     事案の性質に従い、裁判所がこれと異なる審理方式をとることもありますし、書面の提出期限も目安であって、裁判所がこれとは異なる定めをすることがありますので、裁判所の指示に従ってください。

  • 第2  審決取消訴訟(商標・意匠)の進行について
       審決取消訴訟(商標・意匠)については、ほとんどの事案で口頭弁論期日において手続を進めています。個別の事案に応じて、手続の進行が異なり、第1回口頭弁論期日の前にウェブ会議による期日等が実施されることもありますので、訴状提出後の担当部からの指示に従っていただくようお願いします。なお、令和6年3月1日から、ウェブ会議の方法による口頭弁論期日も実施することができるようになりました。
     第1回口頭弁論期日の前にウェブ会議による期日等が実施されるのは、主張や証拠の整理・補充や求釈明の必要性がある場合等になります。この場合の、審理の方法は、審決取消訴訟(特許・実用新案)の4(2)と同様なものとなります。