(1) 法と技術のかかわり -法工学への取組み

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技術は,膨大な理学・工学の体系(「理学の海・工学の大地」)(資料1)に支えられているが,様々な面で,法的枠組みの整備がなされないと,工学・技術の発展は難しい。なぜなら,社会において法が行っている目標設定等は,いずれも,個々の技術開発の方向性や技術内容に非常に深く関わっており,法的枠組みがしっかりしていないと,工学技術を専門としている人間もやっていいのかすら分からないことになってしまうからである(資料2資料3)。逆に,法と工学・技術がうまく調和して連関すると,非常に大きなシナジー効果が期待できる(資料4資料5)。

そこで,「機械学会」は,2年程前に,機械工学を構成する主要分野に,「法工学」(法と技術の関わり合いを研究する学問)なる部門を新設し,今まさに,弁護士・弁理士といった実務家や法律の専門家の先生方にも参加していただき,いろいろな形で研究委員会等を開催している(資料6)。

資料1

資料1:理学の海・工学の大地の図/技術が膨大な理学・工学の体系によって支えられている:図解/理学の核である「物理学」「量子力学」「化学」の3つが理学の海の円に囲われている。理学の海には「熱学」「物性学」「原子電子学」「光学」「電磁気学」「力学」がある。その外側に工学の大地があり、「エネルギー学」「伝熱学」「反応学」「合成学」「分析学」「高分子学」「物質構造学」「人工知能学」「遺伝子学」「情報学」「計数学」「制御学」「電気学」「機構学」「機械力学」「材料強度学」「構造力学」「流体力学」がある図

資料2

資料2:法の工学・技術へのかかわりと期待される役割:図解/「工学・技術の目標を設定する法」の円には「排ガス規制」があり、「工学・技術の進歩を支援する法」には「技術振興助成」「資源循環」がある。「工学・技術の結果から人間・社会を守る法」には「環境保護と「安全」があり、「工学・技術の使われ方を監視する法」には「遺伝子組み換え」がある。「工学・技術の対象範囲を規制する法」には「宇宙開発」「原子力開発」があり、「工学・技術の成果と権利を守る法」には「特許・知財」がある図

資料3

資料3:法と工学・技術との調和的連関が生み出す効果・ルール・制度:図解/法と工学・技術の連関にかかわる体制の整備の円が中心にあり、8の円「生活活動の監視/販売活動の規制」「規格・基準の制定/認証、許可の実施」「知的財産の保証/紛争の裁定」「国際関係の整備/貿易関税協定の制定」「製造者責任の明確化/被害への補償」「安全性の確保/有害物排出の禁止」「製品品質の保証/製品機能の指定」「開発目標の提示/開発義務の指示」に矢印が向かっている。

資料4

資料4:法と工学・技術の協働=文理シナジーの図。「文理シナジー」は、時代を開拓するキーコンセプトであり、これを実践する場を整備し、活動を支援する必要がある:図解/文理シナジーが中心にあり外側の6つの円、「法と工学・技術の調和的発展」「安全社会インフラ/持続社会インフラ」「医療・福祉の革新/生命倫理と技術倫理との調和」「人間科学の発展/人機能と技術との融合」「先進技術の開拓/バイオテクノロジー/ヒューマノイド」「地球環境の保全/食料・エネルギーの確保」にそれぞれ矢印が向いている図

資料5

資料5:「法工学」の研究推進は「文理シナジー」の最重要課題である:図解/文理シナジーが中心にあり、「法:専門家・研究者」と「工学・技術:研究者・技術者」からそれぞれ矢印が「文理シナジー」に集まり、「文理シナジー」から「工学・技術の調和的発展/持続性を備えた社会の構築」に矢印が向いている図

資料6

資料6:工学の中核をなす機械工学。「新版機械工学便覧目次より」機械工学を構成する主要分野:図解/「基礎分野」「計画・設計分野」「応用分野」の3つの分野があり、それぞれの分野に工学が分類されている。「基礎分野」には「総合機械工学」「機械力学」「材料力学」「流体力学」「計算力学」「情報・ソフトウェア工学」「電気・電子基礎工学」「化学基礎工学」「数学単位・物理定数」がある。「計画・設計分野」には「設計工学」「材料学・工業材料学」「加工学・加工機器学」「機械要素・トライボロジー」「計測工学」「制御システム工学」「生産システム工学」「バイオメカニクス」「法工学(新設)」がある。「応用分野」には「産業機械・装置」「流体機械」「熱機器」「内熱機関」「エネルギー供給システム」「交通機械」「メカトロニクス・ロボティクス」「情報・メディア機器」「医療・福祉・バイオ機器」「環境システム」「宇宙機器・システム」がある図