(3) 技術・知識が知財になるために

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技術に関わる知識は,大きく分類すると,1.原理,2.手法・手段,3.結果・効果という要素によって構成されており,各要素はそれぞれ異なる知識を必要とし,異なる「知財」を生む(資料11)。

つまり,このような知識を構成する要素をしっかり分析・整理した上で,従来の既成概念にとらわれることなく自由に技術を分析したり,技術融合・ボーダーレス化のように複数の技術を組み合わせたり,知識を再構築することなどによって,新しい「知財」が生まれてくる可能性があるということである(資料12資料13)。

さらに,生み出した「知財」を守るという「知財戦略」においては,知識・技術の可能性を評価する力と知識・技術の品質を管理・維持する力が必要となる(資料14)。

また,特許の申請や獲得といった戦略そのものも,「知財戦略」になるということが言える。つまり,知識や知財の種類や特質によって,成果の公表と特許申請のタイミングが異なるため,両者のタイミングをどうするかということが,知識や知財を守ることができるかという結論を左右するのである。

具体的には,原理・製品の開発というのは,侵害の事実を比較的早くに発見しやすいため,その権利を初期の段階で獲得しておくのが得策であり,これに対し,製法やプロセスに関する特許については,なかなか真似されても真似された事実を発見するのが困難であるため,最後の最後の段階(利用製品化段階)に成果を公表したり,特許申請をした方が結果として特許保護につながるのである(資料15資料16)。

資料11

資料11:原理、手法・手段、結果・効果は、異なる知識を必要とし、異なる「知財」を生む。「技術に関わる知識を構成する要素」:図解/「原理(法則・規則・因果関係・一般性・再現性)」から「手法・手段(設置・装置/機械・機器/器具・手順・順序/解析モデル・解析手法/材料・資材)」へ「手法・手段」から「結果・効果(強度/形状/寸法/精度/速度/電気特性/化学特性/磁気特性/光学特性)」へと向かう図

資料12

資料12:「知識の分析・再構築が新たな「知財」を生み出す」:図解/「知識の獲得/知識の創造」の円から「知識の分析・再構築とは/事象・事物を支配している規則性・法則性を新たに見出し、蓄積すること」の円から「知識の拡張/知識の多様化」の円へと向かう。そこから2方向へ別れ、「利用範囲の拡大」、「思考範囲の拡大」、「行動範囲の拡大」の円を通り「知識の獲得/知識の創造」の円へ、もう一方は、「利用形態の拡大」、「思考形態の拡大」、「行動形態の拡大」の円を通り「知識の獲得/知識の創造」の円へ向かう図

資料13

資料13:「技術融合とボーダーレス化は新たな技術と「知財」を生む」。「技術融合/ボーダーレス化の種類/構造」:図解/中心に「技術融合/ボーダーレス化」の円があり外周の6つの円「手法・プロセスの融合」「理論・データの融合」「材料機能・材料形態の融合」「知識・情報の融合」「システム・ネットワークの融合」「機械・工具の融合」からそれぞれ矢印が向いており、外周の円は隣同士の円に時計回り、反時計回りに矢印が向いている図

資料14

資料14:「知財戦略に必要となるのは、知識・技術の可能性を評価する力/知識・技術の品質を管理・維持する力」:図解/「知識・技術」の枠に信頼性、確実性、有用性、効率性、操作性、即応性、関連性、拡張性、加工性、保存性、無害性、安全性があり、「品質・機能/評価性能・管理性能」の矢印が「知財」に向いている図

資料15

資料15:「特許の申請・獲得・防衛戦略は、知識戦略そのものである」。「成果の公表と特許獲得に関する得失と難易」:図解/縦軸は、成果がもたらす技術「手法・手段」の囲い込み易さ・技術がもたらす成果の囲い込み易さとなり、上に行くほど囲い込み易くなっている。横軸は、技術を占有する権利の守り易さ・成果を占領する権利の守り易さとなり、交点から技術、成果をなっている。中心から斜め右上に向かって斜線が引かれ、中心は斜線上部の中心から「製法特許」「製造装置特許」「製造機械特許」「材料特許」「原理特許」とあり、斜線下部の中心から「プロセス特許」「構造・機構特許」「機能特許」「物質特許」「製品特許」とある図

資料16

資料16:「効果の公表と特許の申請は、弾力的且つ戦略的に行うことが重要」:図解/縦軸は成果の公表・特許申請の数と範囲、横軸は3分割されており、交点から基盤機構段階、進化拡張段階、利用製品化段階となっている。交点から斜め右上の斜線が引かれ、線より上部分に「原理・製品などの開発と公表のタイミング曲線」が引かれ、線中心に「製造プロセス・機械の開発と公表のタイミング曲線」があり、下方向に「機構・機能・特性等の開発と公表のタイミング曲線」が引かれている図