平成28年1月28日及び29日,シンガポール経営大学(Singapore Management University, SMU)において,IP Scholars Asia国際会議が開催され,最高裁判所事務総局行政局の松川充康局付が参加しました。
この国際会議は,アジアの知財法を専門とする研究者が一同に集い,各自の研究状況や考えなどを報告及び討論することを目的とするものです。シンガポール,中国,インド,インドネシア,韓国,日本などといったアジア各国のほか,英国,米国,オーストラリアなどの研究者が出席しました。
会議は,計4名の基調講演と多数回の分科会を中心とするものでしたが,松川局付は,2日目午後に,「IP Litigations in Japan: Recent Trends and Future Perspectives」と題する基調講演のスピーカーを務めました。
講演においては,日本における裁判所の配置などといった司法全体の基礎情報から出発し,知財訴訟における管轄,知財高裁の役割,平均審理期間や特許権侵害訴訟での権利実現割合(判決・和解)といった統計などを紹介したほか,日本の裁判所調査官とシンガポールにおけるassessorの類似性といった比較法的考察も行いました。また,日本の知財判決の英訳や裁判官の国際交流の状況などにも話題が及びましたが,先例性の高い知財判決を英訳し,主要論点ごとに整理して本ウェブサイト上に掲載した「IP judgments listed by topic」については,日本法へのアクセスを高めるものとして,特に好評を得ました。
参加者からは,講演時間内もその後も数々の質問が寄せられ,日本の知財訴訟システム及び実務運用に対する高い関心が示されました。
※講演で使用されたスライドはこちらをご覧ください。(PDF1009KB)