令和3年7月2日,知財高裁研究会が開催され,講師にワシントン大学ロースクール教授・慶應義塾大学法科大学院客員教授の竹中俊子先生をお招きし,「DXと特許保護適格性(AI関連発明特許性の日米欧比較を題材に)」をテーマに講演が行われました。
講演では,AI関連発明について,各国の裁判例,審査及び審判の実情等が紹介され,米国では,特許適格性による除外が拡大し,多くの事件で新規性・非自明性,開示要件で無効とされるべきクレームが地裁で特許適格性がないとして無効と判断されるなどの弊害が生じていること,EPC(欧州特許条約)加盟国では,発明該当性は比較的緩やかに判断され,技術的課題の解決に貢献する技術的構成要素のみが新規性及び進歩性判断の対象とすることができるとされているが,技術的構成要素とそうでない構成要素との客観的区別が困難であるため結果の予測性にやや問題があること,これに対して,日本では,自然法則の利用を核として柔軟に特許適格性が判断されており,米国やEPC加盟国のアプローチよりもDX変革に調和しているのではないかといったご説明がありました。
出席者は,今後,紛争が増加することが予想されるこの分野に関して,比較法的な観点からの知見を得ることができ,大いに参考になりました。